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関係を壊さず親へカムアウトしたいのですが。

相談者Iさん

 最近、職場の同僚に失恋をしました。独り身でも楽しく生活できるのですが、やはりこういったことは苦しいものです。

  両親とは離れて暮らしているのですが、たまに電話や帰省したりしています。先日、落ち込みぎみのまま母親にあったところ、「なんだか元気がないけどどうしたの?」と心配されました。私と母親との関係はいたって良好で、いろんなことを話したりしますが、恋人のことや自分の好きになる人が同性だということは見事に避けてきていると思います。

 私は30代半ばにさしかかり、そろそろ親に男性との結婚はないことと、同性愛者であることをカミングアウトしようと思っています。大切に思っている存在なので関係を壊さずに伝えるにはどのようにすればよいか具体的にアドバイスいただけると嬉しいです。


 
 

親への愛情を込めてカムアウト

 
 私たちにとって親へのカムアウトというのは、同性愛者として生きていく時に避けられないハードルですね。誰もが絶対しなければいけないとは思いませんが、カムアウトした方が生き方が圧倒的に楽になるのは確かです。ただし、親がどの様に受け止めるかは結果にすぎないので、親の反応がとても気になるようなら、少し待った方が良いと思います。

 カムアウトというのは、親に自分を受け入れてもらう機会ではなくて、自分で自分を受け入れ、愛し、自立する機会です。これは親がどう思っても構わないという投げやりは姿勢とは、似ているようですがまったく違うことです。自分の姿を包み隠さず親に見せ、正々堂々生きていきたい、と自分に誓って宣言する日でもあるのです。だから、親へのカムアウトは生涯に何度もないパワーアップのチャンスでもあります。

 で、どのような時にしたら良いか。チャンスは、恋人との関係が安定して、自分が幸せだと思える時期がベストだと思います。私がカムアウトした時も、パートナーとの関係に自信が持て、幸せだと思える時でした。私にとって幸せな時というのは、他者の愛情が感じられる時です。そういう時は、心も広がり、勇気も出て来ます。

 親は、娘が可愛いし、幸せになってもらいたい。同性愛がイケナイと思うのも、娘が不幸になるのが心配なのです。そこで娘が「私はこの生き方でほんとうに幸せなんだ」とキチンと伝えられると、親は半信半疑ながら少し安心ができるのです。もちろんそういう親ばかりではありませんが。

 私の両親の場合は、娘が外国で一人で寂しく暮らしているよりは、仲の良い人と人生を歩めるのならそれでも良いだろう、というような感じで受け入れてくれました。まあ、100点満点ではないのですが、彼らの年齢(当時75才頃)や生きて来た背景を考えれば最高の理解だったと感謝しています。親たちの考え方をよく理解して、彼女たちが受け入れやすいように話をすることです。

 心構えとしては…あなたが大切だから嘘はつけません。偽りのない自分の姿を伝えた上でこれからも親子関係を持っていきたい、という真摯な気持ちをしっかり持つことが大切です。そのように言葉にして伝えても良いし、そのような気持ちを込めて話をしてください。あなたの愛情が伝われば、親たちも心を広げ、あなたを受け入れることができるのです。

 そして、結果に決してこだわらないこと。I さんはお母さんが傷つくのではないかと心配しておられるようですが、たとえお母さんが傷ついたとしても、それはあなたの存在が傷つけたのではなく、お母さんの偏見が彼女自身を傷つけているのだ、という認識をしっかり持ってください。お母さんが傷つくのは、あなたの責任ではありません。むしろ、親に否定され、深く傷つくのはカムアウトした子供の方なのです。

 彼女が否定的なコメントをしても、それを彼女の限界だと理解し、受け入れてあげるように努力してください。難しいかもしれませんが、同性愛の娘を受け入れる親の気持ちを想像してみてください。理解不能なことでも娘への愛情で受け入れようとする親たちと同じ気持ちになって、娘を否定する親を受け入れることも可能なのです。すべては愛情です。

 親へのカムアウトを通じて、それまで感じられなかった親の愛に触れる感動は得難いものです。結婚式で親に花束贈呈なんて体験より、ずっと魂の震える体験だと思ます。また、隠しごとをして、窒息しかけていた命のエネルギーが蘇える機会となる人もいるようです。私もその一人でした。そういう意味で私たちは、ヘテロの人たちは決して体験できない親と深い関係を持てる幸せ者とも言えます。

 Iさんは、恋人と別れたばかりで、ちょっと元気がない時期にいるようなので、今は親へのカムアウトを考えるより、素敵な恋人を見つけて、幸せな思いを一杯にすることをお薦めします。そして、幸せが満ちてきたらカムアウトのことを考えてみてはどうですか? 急ぐ必要はないと思います。

 

   

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【相談員】
土井ゆみ

ライター。70年代に日本のウーマンリブ運動に関わり、82年よりサンフランシスコに在住。

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